ジャスミン

 仔猫はイライラしていた。全然眠れない。主人である理々子がずっと泣いているからだ。

うるさいなぁ……。

 泣き声だけでも気になるのに、自分をつかまえてグチグチ言ってくる。どうやらあの男にフラれたらしい。たまに遊びに来ていた。缶詰を買ってきてくれた男。どうして……、なんでって……って知るかよ。

 とうとう朝になった。
 俺は外に出た。青空だ。気持ちいい。こんな日にあんなグチにつきあってられるかよ。ちっとも眠れなかった。いいかげんにしてくれ。思い切って、今まで行ったところがない道を歩いた。大きい猫がいないといいけど。

 わっ、と思った。白い花畑が広がっている。いい匂いがする。気持ちがいい。ここで昼寝をしよう。ゆっくり眠れそうだ。
 理々子は会社から帰ってきた。部屋のあちこちに彼の思い出が残っていてつらかった。きっと今晩も眠れない。

 あれ?なんだろうこの香り。甘くやわらかい香りがする。

 ふと見ると……。枕元にジャスミンの花が落ちていた。


鶴川里香
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