言葉のかわりに

 ヒト以外の様々な哺乳類が、生存戦略のためかそれと近しい生き方をするようになってから幾星霜が経ったことだろう。その流れはヒトの近くで生きてきたものから順に起こっていっ た。
 我々ネコの種は体躯をさほど変化させることなく、二足歩行ができるところまできた。とはいえ、好んで後ろ足で立ち上がるものは未だ少なく、若者の流行りで片付けられてしまう程度だ。ヒトの扱う言語を理解するところは早々と習得したが、音をともなって 使用するところまではまだ遠い。人語を話せるネコは珍しく、私もまた大勢のうちの一猫である。おおよそを後 ろ足だけで歩き、ネコ以外との会話は主に”はい”か”いいえ”で答えられるものに限られ、 文字を使うときはタイプライターに頼っている。ヒトの庇護から外れることを選んだ側では、 ありふれたネコだ。作曲、というものを生業にしていることを除けば。


比恋乃
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